2023/01/25 07:21
sumigiの生地の糸の元となる「天然コットン由来の炭繊維」は有志の数社からの共同開発により試行錯誤を繰り返し開発され誕生致しました。
ここに15年以上の歳月をかけて誕生した「天然コットン由来の炭繊維」の歴史をご紹介致します。
糸の開発に成功したのは、某企業の二代目代表の父親である先代です。
●2000年初頭機能素材への思い
開発者は、防衛省の官僚や大企業の代表を経て、機能性素材に取り組み始めました。
植物性炭繊維の配合・応用は昔からありますが、機能性素材や物を使うのではなく、いつか引退して社会に役立つことをしたいと考えていたそうです。 「老若男女が心地よく着られる100%天然素材があったら」という思いをずっと持っていました。
あくまで天然、自然界に存在する物で糸、もしくはそれに代わる資材を模索していた様で、試作で竹炭を練りこんだ不織布を作ったりしましたが、用途が限られていたり効果が薄れたりでなかなか思うように実現出来なかった様です。
そこで考え直したのが、特定の効果を加えるのではなくて「原料そのものを機能素材に出来ないか?」という事でした。
「天然素材の中で広範囲に機能的役割を果たしてくれる原料とは」という問題を考えた時にやはり真っ先に思いついたのが、日本やアジア圏でも昔から広く使われているなじみ深い『炭』という存在でした。
当時から開発者は炭を原料とした物で身に付けられる物を考えておりました。
常に身に付ける事によって身体の快適さが増す事を知っていたからです。
常に身に付ける事によって身体の快適さが増す事を知っていたからです。
炭は様々な効果があります。炭の中には無数のポーラス(多孔質)構造になっており、このミクロの穴の構造により様々な効果をもたらします。調湿、殺菌、遠赤外線、浄水効果といった機能・効果がそれで、インターネット上でもいろいろな効果と商品が所せましと並んでいます。
人間だけでなく、野生生物も炭を使います。動物も体調が悪いと、本能的に炭を食べます。驚くべき事ですが動物も、炭を食す事で炭の持つ殺菌効果、遠赤外線効果等を得られる事を知っており、その効果を本能的に理解しているのです。動物でも知っている自然界の「薬」を人間が利用しない手はありません。先代はそこに目を付けました。
●2003年 植物性炭繊維の開発に着手する。
いよいよ植物性炭繊維の研究を本格的に始めます。前述の通り以前から炭素粒子の練りこみ式や振りかけ式の所謂「人工的に炭の効果が得られる靴下や素材」は存在しておりました。しかしながらも何度も使用すると、どうしても効能が激減する事を先代は熟知しておりました。
開発者は以前から「何とか炭事体を繊維にする事は出来ないのか?」と考えていたのです。
防衛省時代からカーボンの専門知識もあったので「試行錯誤すれば植物性の炭繊維を作る事も可能なのではないか?」との仮説の基、自信と目算もあったようです。
実験にあたってまず綿を焼成する釜を貸してもらえる所を探しました。ですが心当たりも乏しく、国内で釜を貸してもらえる企業や工場は存在しませんでした。
実験前からこの問題につまずき、実際に東奔西走し、手を貸してくれる企業様を探し回るのに時間がかかりました。
そんな中、開発者の知人から韓国で焼却炉を持っている会社が廃業するからその炉を買わないか?との話が舞い込んできます。まさに「渡りに船」という想いだったと思います。
早速釜を購入し実験を始めましたが、通常では綿を炭化する事は出来ても繊維にすることは当然できませんでした。通常は燃やすと黒い粒子になってしまうからです。
開発者は失敗を何度も繰り返しながらも情熱と根気強く繰り返すことによって、問題を一つ一つ解決し、工程が構築されていきます。研究着手から炭繊維が完成するまで実に約7年の歳月がかかっております。
●2010年 植物性炭繊維の開発に成功
炭化された糸が晴れて完成する事になります。
製造工程や方法は企業秘密でしてここでは明かせませんが、大まかに3つの工程から成っており、製造ラインを組まず、1工程終えると先代の会社に素材を入れ、次の工程の工場にその素材を納品する門外不出の徹底ぶりでした。これも防衛省時代の機密情報管理の教訓が生かされています。
現在でも「特許を取らなくても情報が漏洩しない」という確信が有ります。
実際、類似品は現在存在しておりません。情報が流れないからです。この徹底した情報管理のスキームのおかげで製造工程(方法)がきちんと守られている証で有ります。
●2011年 カラー展開の難しさを知る
糸が完成し、縁故を辿って靴下を作成、商品化し、それなりには注目も浴び、販売も伸びましたが「靴下は所詮靴下」。いくら機能が優れても実衣料としての要素も多く、打ち出しが脆弱で、市場価格と比較しても高価な問題も重なり、開発者が描いていた「世に役立つ物を広める」と言う強い想いを描く事にはまだまだ遠く及びませんでした。
しかしながらも靴下が一番炭の効果を発揮する製品であるという確信から、どの様に今後うまく展開出来るかも思慮していました。
当然靴下だけではなく試作でTシャツや下着を作りましたが商品化後の量産がうまくいきませんでした。
しかし早速壁に当たります。魅力ある様々な用途に対応するにはカラー展開も必要です。
今まで生糸だけで生産していた為、糸に色を染める事をしておりませんでした。そのため炭繊維の肝であるポーラス(孔)の部分が「染料によってふさがれてしまうのではないか?」という問題にあたり、実際一時期は染色をする事が頓挫しました。
これもトライ&エラーを繰り返し、根気よく染色方法や使用材料を幾度も試すことによって問題の解決に成功し、検査機関での良好な検証・試験結果を残せ、各分野のエキスパートの方々や賛同した企業が参画し、いよいよ本格的に販売をかけていこうと思っていた時期新たな局面に立たされます。
●2012年 開発者の急逝と二代目への世代交代、諸問題への尽力
開発者が急逝されます。その後はご子息の二代目との方針協議が連日続きました。
製造方法は先代から受け継がれており製造・生産自体は物理的には可能でしたが炉のメンテ、人員のコントロールやコスト等を今後どう各社で割り当ても決め、維持継続して行くかの協議が頓挫し、やがて一社、また一社とこの事業から身を引いていくことになってしまいました。
この頓挫した期間だけでも3年間を費やし、その期間は安定した製造・生産が実質不可能になり「天然コットン由来の植物性炭繊維」をリリースする事が困難となりました。
●2019年 弊社との出逢い
上記理由にて不安定な生産しかできなかった天然コットン由来の植物性炭繊維ですが、この事業を引き継ぎたいという工場と出逢えます。この工場の事業参画により以前より更に安定した生産背景が確立される事となったのです。
その工場を通じて弊社と出逢うこととなったのです。
開発者の構想から15年以上の歳月が経過しましたが、この「天然コットン由来の炭繊維」が本当に人や環境に優しく、世の中に貢献したいという開発者の熱い想いとの約束を引き継ぐことになったのです。
私たちは、開発者から受け継いだ良い素材を、皆さまに素晴らしい形でお届けできるよう日々努力を続けます。